建築基準法「4号特例」見直し決定
2025年4月に建築基準法の改正が施行され、「4号特例」が縮小されることとなりました。
なぜ今建築基準法が改正されるのでしょうか?
それは現在の地球環境や世の中の流れを考え住環境をより良くしていくためです。
具体的には
[欠陥住宅・悪質リフォームを防ぐため]
建築確認申請が不要となるという点を悪用し、不適切な設計・施工を行う悪徳業者が後を絶たないという現状があります。日本弁護士連合会は、2018年に「4号建築物に対する法規制の是正を求める意見書」を公表。この訴えも今回の法改正に大きく影響していると言われています。
[住宅の省エネ性能向上させるため]
2050年カーボンニュートラルの実現への取り組みの一環で、高い省エネ基準に適合する住宅を増やしていく施策の一つとされています。
[建物の耐震性を高めるため]
今の建物は省エネ性能向上のための断熱材や省エネ設備搭載で住宅の重量増加に見合う強度が必要となっています。地震や台風などの自然災害へのリスクも高まっているため、耐震性安全性に優れた建物の設計・施工が重要なのです。
そもそも「建築確認申請」とは何でしょうか?
「建築確認申請」とは、住宅を新築するときや増改築する建物が、建物の安全性を守る建築基準法に適合したものであるかどうかを確認するための制度のこと。違法建築物を取り締まる目的で行います。
4号特例が導入された1981年当時は高度経済成長期を迎え、住宅の着工件数が急増していました。そのため小規模の木造住宅については申請業務の省略で建築コスト削減やや建築時期の短縮を図りました。
当時より木造住宅の耐震基準が高くなり、新築だけでなく既存の住宅についても安全性が求められるようになっているのです。
それでは「4号特例」とはどういったものでしょうか?
建築基準法で建築物はその用途や構造、面積などに応じて1号から4号までに分類されています。
現在の建築基準法
4号建築物
*木造[2階建て以下]かつ[延べ面積500㎡以下]かつ[高さ13mもしくは軒高9m以下]
*非木造[平屋]かつ[延べ面積200㎡以下]
一般的な住宅は
ほとんどこれに該当
4号特例
*構造耐力関係規定等の審査を省略することとなっている
*4号建築物は構造計算書を提出しなくてもよい
「4号特例」はどう変わるのでしょう?
建築基準法で改正で「4号特例」が縮小されます。
現在の建築基準法
改正後の建築基準法
2号建築物
*[木造2階建て]または[木造平家建て]かつ[延べ面積200㎡を超えるもの]
一般的な住宅は
ほとんどこれに該当
これからは
*4号特例の縮小により、対象となる審査項目が増えます。
*新2号建築物は、すべての審査項目において対象になります。また、4号特例では審査対象外であったものが、新2号建築物では対象となる項目もあります。
対象項目の例は、以下の通りです。
屋根や外壁の防火性
居室の採光や換気
建築材料の品質 など
リフォームにはこの改正でどんな影響があるのでしょう
「4号特例」の縮小により、リフォームを行う場合にも建築確認申請が必要となるケースが増えることが見込まれます。
これまで不要とされていた構造計算の実施や耐震補強工事が必要になる可能性もあるため、リフォーム費用や工期が増加する場合も多くなるでしょう。
リフォームのプラン作成時に新基準に対応するため思わぬ規制が生じる場合があります。
大規模修繕・模様替えや増築等にあたるリフォーム工事は確認申請が必要となります。
大規模修繕・模様替えとはどんなものか・・・・
主要構造部である屋根・壁・柱・梁・床・階段の1つ以上の過半を修繕又は模様替えすること
大規模修繕・模様替えに該当する工事の例
*階段の架け替え
*スケルトンリフォームなどの大規模な間取り変更
*屋根の半分以上を下地からやり替える場合
*外壁の半分以上を下地から貼り替える場合
大規模修繕・模様替えに該当しない工事の例
*水廻りのみの交換
*クロスのみの貼り替え
*サッシ交換
*階段の重ね張りによるリフォーム
上記は一例です。
法改正で必ずしもリフォームができないとは限りませんが
改正前の工事のご相談が増えています。
まずはリフォーム工事内容や工事時期について相談されると良いと思います。
また建築確認申請が必要なケースでは、確認申請の書類作成に必要な情報や図面等の資料をご提供していただいたり、これまで省略されていた構造関係の資料や計算書が義務化されるため、壁や床や天井などを剥がして内部確認をしなければならない可能性もあります。
さらに、新しい基準に合わせるため希望のリフォームができなくなる可能性や、特に行政による確認や審査には時間がかかることが多く、これまでのリフォーム工事よりも工期が長期化するケースが増えることが予想されます。
今までかからなかったような申請費用のほか、基準に合わせるための追加工事費用が生じるケースも考えられ、予算を十分に確保しておく必要が出てくるでしょう。
数年の内にリフォームをお考えの方は、法制改正の2025年4月より前にリフォームの前倒しを検討するのもおすすめです。